ワインのラベルについて
TAMAI WINEのワインラベルについて、私がワインに込めたい想いや背景もお伝えできればと思い文章にいたしました。
私にとっては、ワインの本質はその味わいであって、ラベルは二の次です。
しかし、ラベルにはワインそのものに造り手の考えを付加する役割があると思い、それなりに考えて制作しました。
私にはまだワイナリーがありませんが、ラベルのデザインはワイナリーができてからもその先も変えるつもりはありません。
なお、文章では妻のことも登場します。
これは、畑仕事は私一人で行っていますが、ラベルについては私一人ではなく妻と一緒に考えたためです。
ご興味がございましたら、お読みいただけますと幸いです。
コンセプト
コンセプトは「四季」です。
私が住む長野県飯綱町は、四季の変化が美しいと感じます。
春には、雪解け後の寂しげな地面が次第に一面の草花に覆われ、虫たちが動きはじめ、桜やリンゴの花が咲きます。
夏には、豊かな太陽の光が降り注ぎ、山肌の緑は濃さを増し、草花はその勢いを増していきます。
秋には、肌寒い日が多くなり、飯綱山の裾野から紅葉のカーテンが降りてきます。
冬には、雪が降り積もり、時が止まったかのような静かな日もあれば風雪が厳しい日もあります。
そんな飯綱町の四季の変化を表現するものとして、「一本の樹」をモチーフにしています。
樹種は決めていませんが、季節に応じて様々な変化を見せる広葉樹です。
幹はどっしりと太く、その土地に根付いて、何年もの間その土地を見て来た大樹のよう。
私のワイン造りもそうありたいという想いも込めています。
葉の色は、ワインで表現したい飯綱町の四季とつながっています。
桃色は穏やかな飯綱町の春を、緑色は冷涼な飯綱町の夏を、オレンジ色は実り豊かな飯綱町の秋を、白色は透明感のある飯綱町の冬を表現したいと考えています。
描き方は、オレンジ色のみ水彩絵の具で描いています。
その他の色については、統一感を保つために、オレンジ色の原画をベースにデジタルで色を変えています。
私は、一人で隅々まで目が行き届く規模でワインを造りたいと考えており、その規模はわずか1.3haの畑、ボトル7,000本程度の生産量を目標にしています。
小さなワイン農家がつくる手作りのワインであることを表したくて、手書きのデザインにこだわりました。
背景
デザインを考え始めた時、あれこれと案を考えたわけではなく、自然と頭に浮かんだのが「一本の樹」そして「葉の色を変えることで四季を表現」というアイディアです。
妻にアイディアを話した時も、すんなり「いいね」となりました。
私は長野県長野市出身で、飯綱町の自然環境ととても似ている場所で生まれ育ちました。
子供の頃は実家のリンゴ畑が遊び場であったなど、自然がある環境で感性がつくられたのだと思います。
そんなことで趣味はアウトドアで、大学時代はアウトドアサークルに所属し、勉学はそこそこにアルバイトに精を出し、得たお金は自転車旅、登山、海外でのバックパッカー旅に費やしていました。
社会人になってからもアウトドア趣味は続き、カメラとテントを担いで山に登り、山の写真を撮影することに没頭。
私の感性がたどり着いた先は長野県の白馬岳という山でした。
豪雪の山だからこそ見せる四季の変化、美しさがあり、白馬岳の四季を写真に収めたくて、横浜に住んでいる時も時間を見つけては白馬岳に通っていました。
白馬岳に通う中である写真家と出会いました。
その写真家が好んでいる画家が東山魁夷です。
気になって、国立新美術館で行われた東山魁夷の展覧会に行った際に惹かれたのが、「冬華」「花明り」という絵です。
両方とも一本の樹がモチーフですが、生命力を感じさせる立派な枝ぶりと季節の表現に、絵の中に引き込まれるような感動を今でも覚えています。
これらの絵が印象的で、モチーフはブドウの樹でもなく、森や草花でもなく、「一本の樹」にしようという着想に至ったものと思います。
また、妻との出会いは、大学時代のバックパッカー旅にさかのぼります。
大学は全く別の場所でしたが、それぞれでバックパッカーをやっていて、アルゼンチンの空港でふと出会ったのがきっかけでした。
妻も自然が好きで、お互いにネパールのアンナプルナベースキャンプや東南アジア最高峰のキナバル山にも登ったことがあったなど、嗜好は似ています。
そんな私たちですので、新婚旅行の行き先はアラスカ、国立公園でキャンプという始末です。
私たちには子供が2人いますが、名前にはそれぞれの子が生まれた季節に応じて、「春」、「秋」という字を入れています。
自然を楽しむ感性豊かに育ってほしいとの願いからです。
葉の色を変えることで飯綱町の四季を表現するというアイディアは、私たちの感性のみならず、日ごろから呼んでいる子供たちの名前から来ているのかもしれません。笑
デザイナー
アイディアは考えたものの、自分で形にする自信はありません。
ラベル制作にかけるお金もなく、どうしようかと考えていた時、妻の弟の奥さんである大久保愛さん(@aiokubo)が美術大卒であることを知り、「こんなコンセプト、イメージで水彩で描ける?」と相談したところ、「やってみます」と何十パターンも描いてくれました。
偶然にも出身が私と同じ長野県であるためか、どの絵もどこかで見たことがある景色に感じました。
そして、何度か打ち合わせを重ねて描いてくれた中から、私も妻も愛さん自身も全員一致で選び出したのが今回のモチーフです。
私のワイン造りは家族の理解と協力あってのワイン造りであり、TAMAI WINEの顔であるモチーフも家族のつながりで制作できたことは嬉しく思います。
また、モチーフ以外のラベル全体のレイアウトは、同じ飯綱町在住のORB DESIGNさん(@orbdesign20)にお願いしました。
TAMAI WINEのロゴも制作してくださったデザイナーさんであり、私たち家族の友人でもあります。
ラベルのサイズを決めるところから、印刷した時の色味など、ORB DESIGNさんと妻で細かいところまで詰めてくれました。
大久保愛さんとORB DESIGNさんには心より感謝しています。
最後に
Aboutのページにもまとめておりますが、私は、「ブドウが育まれるこの土地の風土を映すワイン」を造りたいと考えています。
この土地の風土とは。
この土地が生み出す風味とは。
私のワイン造りは試行錯誤のスタート地点に立ったばかりで、土地を理解し、表現するまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、ラベルに込めた想いをワインの味わいとしても表現できるよう精進したいと思います。
皆様、長文にもかかわらず、お付き合いいただきましてありがとうございました。
2025/4/17
TAMAI WINE 玉井勝浩